「皇国の守護者」 佐藤 大輔と伊藤 悠

 新城は冷然たる表情でそれを受け止めた。自分が嫌っていた者。好意を持っていた者。再評価しようとしていた者。すべてが死んでしまった。何とも現実的なことだなと思った。
「そいつは素敵だ。面白くなってきた」
 新城は静かな声で応じた。様々なもので薄汚れた顔面に邪悪な笑いをはりつかせている。
 それを正面から受け取った猪口の顔から一瞬表情が消え、やがて復活した。窃盗の常習犯が国事犯をあおぎ見るような顔つきであった。
 明らかな敬意を示しつつ猪口は相槌を打った。
「ええ、まったく楽しくなってきました、中尉殿」
皇国の守護者 第1巻P.115より
「若殿様、あれは戦場音楽です。銃を用いない戦闘の。自分の父が戦っていたような、男がその真価をかけるべき戦いの」
 バルクホルンは唖然とした表情になり、やがて喉の奥で何かを罵った。そして言った。
「一声も発さずに部下を戦わせることができるのか、この島国の猛獣使いは。よほどの強者だぞ。指揮官も、兵も」
皇国の守護者 第2巻P.44より
 背後から叫びが聞こえた。漆原だった。猪口ではなく、漆原だった。彼は命じていた。
「総員、大隊長殿を救え!突撃!」
 莫迦野郎。どうしようもない大莫迦野郎。新城は思った。この僕を救えだと?
 畜生。あいつ、命令を守っている。自分に続けば、半数は死んでしまいかねないことを知りつつ、そう命じている。ええい。命令というのはもう少し厳格でなければいけないな。まったく気に入らない。気に入らないぞ。戦争とはもっと残虐で、救いのないものであるはずなのだ。
 こんな戦争は、大嫌いだ。
皇国の守護者 第2巻P.54より

今年のGWは読書週間にしようと思っています。
そんな自分にぴったりの良書を見つけました。「皇国の守護者」です。

とっかかりはヤングジャンプコミックスだったのですが、この原作も気になってチェックしてみました。素晴らしい本でした。

かなりの佐藤大輔節が入っていますが、心地良いです。

これを読み終えたら、次は「A君の戦争」かな。

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バッテリー6巻

Clipboard2
だいぶ前に読み終えていたのですが、今回バッテリーの漫画版を読んだので、その関連として記しておきます。

常日頃、週刊連載漫画を読んでいる自分としては、人気がある作品がひたすら延命され長生きする場面によく出会います。
そんな環境にいる自分にとって、この作品の終わらせ方は久しぶりに読了感を味わわせてくれたモノでした。意外性はないのですが、この後の彼らはどうなるんだろう?と想像力をかきたてられる展開は好きです。

大長編の野球漫画ばかり読んでいる自分にとっては、「高校編」が出ないかなぁと思ってしまいます(笑)。

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"バッテリー" あさのあつこ

なあ、豪。おまえは、どうなんだ。
勝利をみんなで喜びあうことも、
敗北をいっしょに悔しがることも、
仲間と心が通じあうことも、
まとまったいいチームになることも、
なんの意味もない。
そう、思わないか。
バッテリーIIIより

正直、紹介するのを躊躇いました。なんの先入観もなく読んでほしい本です。
私がこの本と出会ったのは、月刊アフタヌーン連載の「おおきく振りかぶって」という野球マンガの関連書籍としてでした。しかも買ったのは友人で、それを借りたのです。

全然期待していませんでした。

角川で文庫化されて、後追いでII巻が出たのかなぁと、勘違いしていました。
実際は2004/12現在、5巻まで出ていて、来年1月に最終巻6巻が出ます。

すべて大間違いでした!なんということか。
こんな野球小説があったのか。しかも少年野球でこんなに熱いのかと、驚愕しました。

あぁ!これ以上の情報を得ないで読んでほしい!

というぐらいいい小説です。
というか、ライトノベル?
って、児童書だし!
…そうなんです。なんと児童書。子供向け小説。
でも、私は声を大にして言いたい。「子供にはもったいない!」と。

書店で見かけたら、ちょっと立ち読みしてみてください。
繊細な文章と、個性的が光る素晴らしいキャラクター達を観察して、感じてほしいです。


バッテリー
バッテリー〈2〉 角川文庫  あさの あつこ (著)

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(05/04/04追記)
バッテリー6巻について、書きました。こちらもどうぞ。

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海上護衛戦

海上護衛戦」(amazon)

悲しい太平洋戦争の現実を伝える本がまた一冊…。ですが、この本は情緒に訴えません。淡々と数字とその現実を記そうとしています。
負けるべくして負ける戦争というものがあるという事が分かりました。そして、我々の祖先がその戦争に巻き込まれていった事も。

ちょっと夏には遅かったですけれども、この淡々とした文章の奥底の流れというものが分かっていただけると、太平洋戦争という歴史の一面を読めるかと思います。

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1ヶ月近く放置していて申し訳ない。またぼちぼちと再開します。

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反社会学講座…本になるんです

近年久しぶりに大笑いできるグラフをみました。
Aquarian's Memorandumさんのところの「出生率推計の誤り、なぜ?」です。
引用なさっている朝日新聞のグラフなんですが、出生率の推計があまりにも外れすぎてる。推計では底を打つはずのグラフがひたすら右下がりになっているのは、ある意味、爽快でさえあります。

なにを考えてこんなグラフになったのかなぁと思っておりましたら、このグラフ、85年より過去がない。きっと過去のグラフをみれば納得するのかもしれない。

そんな気分になったのは「スタンダード 反社会学講座」の読み過ぎかな。
この反社会学という名前がイイ。それがスタンダード!ますますイイ(・∀・)。
で、このサイトの神髄は「第2回 キレやすいのは誰だ」かな。少年犯罪の増加という、一般常識にまでになっているマスコミのミスリードを、反社会学的に暴いています。
#まぁ、グラフの見方の一つなんですが。

最近知ったのですが、この「スタンダード 反社会学講座」さんが、なんと本になります。
6/20発売です。
反社会学講座」(Amazon)

一冊買っておくと面白いかもしれん。

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デアゴスティーニからガンダムが

シャア専用ブログさんより

「週刊ガンダム・ファクトファイル」テスト販売決定

デアゴスティーニ、本気か!?全100号だそうだけれど、どんな内容なのかな。

宮城県の人、がんばってください。

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"イリヤの空、UFOの夏" 秋山瑞人

なぜ今頃イリヤの空をとりあげるのか。
冲方丁 まだ見ぬ地平へ」という書評サイトを見つけて非常に納得してしまったから。

「イリヤの空、UFOの夏」とはジュブナイルSFである。もしくはライトノベルという言い方もある。とりあえず、今年の星雲賞ノミネート作品である。

「最近、いいSF読んでないな~」というあなたは恵まれている。最近完結したばかりのこのSFをはじめから読めるのだから。

1巻2巻3巻4巻の全4巻で完結です。Amazonの書評でもおおむね好評です。

著者インタビュー:秋山瑞人先生」も見つけました。3巻が出版された時期のインタビューですね。
読むと、舞台となる園原市のモデルとして山梨県が一部あると言っています。あー、確かに陸上自衛隊が身近にいて、陸自のトラックがバンバン走っているのが普通の感覚って、園原市と似てるなぁと思います。

あと、3巻前半のキャッチーな一節「鉄人定食」ですが、同じく山梨県にある「ぼんち」食堂がモデルだそうです。やっぱり…というのも、ウチも何度か突撃して玉砕しています。まさに巨大食品食堂なんです。
ネットでもよくこの食堂の評判を見かけます。なかでも、写真が多く見やすいのは下記のツーリングレポートです。下記ページで「ぼんち」を検索すれば、数々の巨大な食べ物を見ることができます。
http://www15.tok2.com/home/daiwai/food/

また、小説を元に自作してしまった強者もいます。
挑戦!鉄人定食!! その一
挑戦!鉄人定食!! そのニ
挑戦!鉄人定食!! その三

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天才歌人あらわるあらわる

天才である。
歌集『念力家族』

「神木にのぼりし兄を見つめいる村人たちの農具光れり」

「金星の王女わが家を訪れてYMOを好んで聴けり」

「中央線に揺られる少女の精神外傷をバターのように溶かせ夕焼け」

短歌、とはこんなにクレイジーで面白いものだったとは。
「サラダ記念日」を目にしたときよりも吃驚したし、たぶん寺山修司を発見した昭和の人々はこんな感慨を抱いたのであろう。

「念力家族」という笹公人の歌集をひょんなことから手に入れて楽しく読んでいる。
一首一首にユーモアが、ペーソスが、どうしようもない懐かしさとありえない奇妙さに酔いしれる。
大槻ケンヂの小説の不思議さと滝本竜彦の小説のイヤさをまぶしてオカルト風味で調理すればこんな歌集になるだろうか。


「注射針曲がりてとまどう医者を見る念力少女の笑顔まぶしく」
「ベランダでUFOを呼ぶ妹の呪文が響くわが家の夜に」
「エジソンに勝たんと発明繰り返す父の背中の鳩時計鳴る」
「夏の夜の夢枕に立つ先祖霊供物が足りぬと吾を叱るなり」
「憧れの山田先輩念写して微笑む春の妹無垢なり」

本読みならば是非手に入れて読むべき本だろう。
通信販売でしか買えないが、この歌人は幻冬社の「わしズム」という雑誌で連載を始めている。立ち読んでみるのも一興だろう。

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"NHKにようこそ!" 滝本竜彦

NHKにようこそ!

「ひきこもり界のトップランナー」滝本竜彦が書く「ひきこもり小説」です。
読むべし。とくに悩みがちな人にお勧め。あと、ひきこもりの人にも。ウチは精神的ひきこもりなのでベストマッチしました。半端じゃないシンパシーを感じつつ読破。

なんというか、自分の思いが文章になっていて驚きました。特に下記なんて、実感そのものです。


「俺は誰よりも欲張りなんだ。中途半端な幸せは欲しくないんだ。ほどほどの温もりなんて、いらないんだ。いつまでも続く幸福が欲しいんだ。しかし、それは無理だ!なぜかは知らないが、この世の中、かならずどこかで邪魔が入る。大切なモノは、速攻で壊れる。――二十二年も生きてるんだぜ。それぐらいのことは知ってるさ。どんなものでも壊れるのさ。だから最初から、なんにもいらない方がいい」
NHKにようこそ!P.222より引用

絶望をライトに表現するとこんな小説になるのでしょう。現代の太宰治……と担当代理人は思っているようですが、似てると思います。

ライトノベルとカテゴライズするには内容が重すぎる。私小説になるんだろうな。
「セカイ系」と一括りにしてる人が多いようだけれど、どうもウチはこの「セカイ系」というくくりが好きではない。まぁ、流行だと思って達観していますが。

まぁ、まとまってない紹介文ですが、こいつはジャケ買いしても外れはない本ということで。
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ロケット好きですか?

私は大好きです。いつか打ち上げを生で見たいと思ってます。

そんな私がたぶん買う本。

「国産ロケットはなぜ墜ちるのか」
宇宙開発ジャーナリストの松浦晋也さんの新刊です。

オンライン書店のbk1がSF作家の笹本祐一さんとの対談をwebに載せています
笹本祐一さんも「宇宙へのパスポート」「同・2」を書いているように、かなりのロケット好きです。
なかなか話も盛り上がっていて、対談を読んでいて上記の本達を読みたくなります。
#実は1冊も持ってなかったりする。

買わねばー。

#bk1さんの企画が元ネタなので、このページの本のリンクはbk1さんの所になってます。

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