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バックドロップ不発

お父さんのバックドロップ』を観てきた。
故・中島らもの傑作小説『お父さんのバックドロップ』の映画化である。

もともとは「四年の学習」の付録の読み物特集の冊子に掲載された作品なのだが、
これが実にいい。

-----------以下ネタバレあり(ドラッグで反転で読めます)-------------
クラス一の秀才のカズオ君のお父さんはプロレスラーの下田牛之助。
元レスリングのオリンピック代表選手で、今はTVのプロレス中継で
おなじみの悪役レスラーである。
しかしカズオ君はそんなお父さんのことが好きではない。

あるとき、カズオ君はお父さんにこう言い放つ「僕はお父さんを尊敬できない」と。
牛之助パパは反論して「お父さんが悪役レスラーを好きでやっていると思うのか? これは誰かがやらなきゃいけないことだ。カズオの学校でもトイレ掃除の係がいるだろう。みんながお花の世話係をやりたがったらトイレを掃除する人がいなくて困るだろう?」と言います。
カズオ君は「そういうことじゃない。お父さんはレスリングの世界から逃げたんだ。勝ち負けのないプロレスの世界に逃げ込んだんだ。僕は勉強して大学に入る。お父さんと違って勝ち負けのある世界で勝負する」。

・・・牛之助パパは落ち込みます。
そして父の復権を賭けてとんでもない手段―来日中だった世界最強の空手家、カーマンに挑戦状を叩きつけるという行為に及んでしまいます。

試合前のマイクアピールで牛之助はTVカメラに向かってこう言います。
「オレはプロレスが好きだ。
 正直俺は怖い。死ぬのは怖いが、それより怖いのは怪我をして大好きなプロレスが出来なくなってしまうことだ」
「みんなはオレのことなどすぐに忘れてしまうだろう。空手とやってボロボロになったバカなレスラーがいたということなど。でも、たった三人の人間が覚えていてくれればそれでいい。
その三人のために戦う。
その三人とは、オレ自身と、オレのカミサンと、オレの息子だ」
-----------ネタバレ終了---------

映画もそこそこ原作に忠実に作ってあり、カズオ君役を神木隆之介(映画『インストール』で上戸彩の乳を揉んだ子)君が好演しており、なかなかイイのですが、それでもやはり冗長な部分が見られます。

最大の改変点はカズオ君のお母さんが死んでる点。
そしてカズオ君がお父さんをキライな理由は「入院中のお母さんが死の床にいるのに巡業先から帰ってこなかったこと」になってるわけです。「尊敬できない」のセリフがなくなってる。
あららら。
これはいけません。

だって牛之助パパは「しょうがなかったんだ」で逃げられますもん。
「やっぱり子供だな、まあそのうちこの子も判ってくれるだろう」
という割り切りが出来てしまう。お父さんは逃げられる。

でも「お父さんを尊敬できない」と真正面から言われたら牛之助パパは逃げられない。
ガツンと応えますよ。息子に尊敬されるためにはどうするか。どうすればいいか。
その結果が世界最強の「クマ殺しのカーマン」への挑戦、となるわけで。

プロレスを「逃げ」というのは中島らもの格闘技への愛がこもったと表現だと思うのですが、この映画の後援協賛にプロレス団体(大日本プロレス)が居るから言いにくかったのかなあ。
画竜点睛を欠く気分です。

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